恋の唄
あれから華原君は何も無かったかのように私と接していた。
誰かに何かあったのかと聞かれたら、自信を持ってあったとは言えない。
だけど、私にとっては意味のある言葉に思えた。
彼の言った「進めない」という言葉に、重要な意味が。
放課後、赤いセロファンを通して見たような夕陽の差し込む教室で、一人で日誌を書きながら私はそんな事を考えていた。
日誌にはその日の報告を書けばいいだけなのに、余計な事を考えてしまうせいでちっとも進まない。
深い溜め息をつき、こうなったらとことん考えてしまおうかと鞄に入れてある手帳から一枚のプリクラを取り出す。
華原君と見つめ合っているプリクラを。
他のは友人と撮り溜めたものと同様に専用のシートに貼ってあるんだけど、これだけはどうしても貼れなかった。
だから手帳に備え付けてあったケースに入れておいたのだ。