恋の唄
「……や、今日はちょっと難しいかもしんねー」
少し歯切れの悪い口調で華原君が言うと、ふいに電話の向こうの声が漏れ聞こえた。
何を言ったのかまでは分からないけれど……
女の、人。
「あー、落ち着けって、大丈夫だから。お前が心配するような事はないって」
宥めるように相手に話すと、華原君はチラッと私を見て微妙な表情をした。
まるでそれは聞かれたくなかったというような表情。
「分かった、行くよ。だからそんな事言うなって」
ズキンッと心が痛んだ。
華原君は、女の人の所へ行くんだ……
誰? 彼女?
考えて、私は気付いた。
そういえば、華原君に彼女がいるのかどうかさえ知らない。
噂も聞かなかったし勝手にいないんだと思ってたけど……
彼女……なのかな。