恋の唄


扉を開けて、高いフェンスが貼り巡らされている屋上へ出る。

柔らかい風が私のスカートを緩く揺らし、同時に髪を靡かせた。


他にも誰かいるのかと思ってたんだけど、見渡しても屋上には人の気配が無かった。

私は備え付けられているベンチに腰を下ろして腿の上にお弁当を広げる。

箸を持って玉子焼きに手をつけた丁度その時、扉の開く錆びついた音がした。

私は玉子焼きを箸で持ったまま扉の方に視線を向ける。


「……なんだ、天音か」

「真柴君」


彼はキョロキョロと屋上を見渡し、また私に視線を戻すとこちらに向かって歩いてくる。


「一人か?」

「うん。友達が風邪で休んでるから今日はここで食べようと思って」


ああ、伊織ちゃん。
もし伊織ちゃんが休みじゃなく、屋上に一緒に来れてたら真柴君とお話が出来たのに。

ううん、そもそも伊織ちゃんが休みじゃなかったらここには来ていないんだ。

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