恋の唄


私は伊織ちゃんの笑顔に応えるようにニッコリと笑む。


「また一緒のクラスになれるといいよね」

「ねー! 一緒がいいなぁ~」


賛同してくれた彼女と私は立ち尽くしていた足を動かして正門をくぐる。


私と伊織ちゃんは高校に入学して同じクラスになり、後ろの席だった伊織ちゃんが声をかけてくれたのがきっかけで仲良くなった。

以来、一年間のほとんどは彼女と行動を共にしてきている。

休日も一緒に遊んでいたし、ヘタすると共働きのうちの両親よりも過ごしている時間は多いかもしれないほどだ。


「ねぇ結衣、もしクラス別々になってもさ、帰りは待ち合わせて一緒に帰ろうよ」

「もちろんだよ」


笑い合ってクラスが発表されている大きな掲示板がある場所まで歩く。

白くて大きなボードが見えてきた頃、伊織ちゃんがポツリと漏らした。


「真柴君とも一緒がいいなぁ……」


少し俯き加減で唇を動かした伊織ちゃんの表情は、まさに恋する女の子そのもので……


「そうだね。私も祈るよ」


何だか微笑ましく思えて自然とエールを送った。



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