恋の唄
勇気が出ないとか、そんなんじゃない。
それはもちろんあるにはあるけど、問題なのはそこじゃなかった。
この前の電話の相手。
華原君のあの態度、行動。
「華原君には……大切な人がいるんだと思うし」
言葉にしたら、本当にそうなのかもしれないと思えた。
それが酷く悲しかった。
真柴君が二つ目のパンの袋を開ける。
その音と重なって、彼の声が聞こえた。
「大切かは……微妙なトコだな」
「──え?」
真柴君に視線を向けると、彼は私ではなく空を見ていた。
青く広がる遠い空を。