恋の唄
「そっかぁ。その帰り?」
質問してもいいものかと迷ったけど、変に気を使うのもおかしい気がしてなるべく普通に聞いた。
そうすれば、華原君は横にずれてベンチのスペースを空ける。
「座れば?」
その行為に席替えの日を思い出して、ちょっとだけ切なさが浮かんだ。
まだ、あの頃は華原君を好きになるなんて思わなかった。
私は華原君の隣りに座る。
気付けば、教室にいる時と変わらないポジションで、それが不思議と私の心を落ち着けている事に気が付いた。
いつの間にか、彼の隣りにいる事が当たり前になっていたのかもしれない。
華原君がポツリと呟く。
「なあ、結衣はさ」
「……うん」
「出口が見えない真っ暗な場所に閉じ込められたらどーする?」
彼の質問に、真柴君の言葉を思い出した。