恋の唄
ここがチャンスなのかもしれないと考えて、私は反撃に出てみた。
「うん、実は」
どんな表情をしたらいいのかが分からなかったから、とりあえず真顔で。
そうしたら華原君は目を大きくして止まったかと思うと、突如クルリと私に背を向けて歩いて行ってしまう。
「えっ、ちょっと華原君!?」
私は焦って伊織ちゃんにヘルプの視線を送る。
だけど伊織ちゃんはニマニマと笑ってるだけ。
「何で笑ってるのっ」
「ううん、別に。ただ、痴話喧嘩みたいだなって思って。とりあえず追った方がいいんじゃない? 私は後ろからついていくから」
やっぱりニマニマしたまま話す伊織ちゃん。
「追うけど違うから!」
「はいはーい。頑張ってね」
楽しそうに手を振る伊織ちゃんににもう一度「だから誤解しないで」とだけ残して私は華原君の背中を追った。
やっぱり伊織ちゃんには私の気持ちバレでるのかなぁ、なんて考えながら。