恋の唄
どこかで歓声が上がるのが聞こえて、それを遮るように華原君の声が耳をくすぐる。
決して大きくない声なのに、ちゃんと聞こえるのは好きな人の声だからかもしれない。
「こんな事結衣に言える権利、まだ俺にはないんだけどさ、言ってもいい? つーか言いてえ」
「うん?」
華原君が少しだけ深めに呼吸して、私を真っ直ぐに見つめて言う。
「俺、けっこーヤキモチ妬きらしいから」
「──え?」
「今さっき知った事実」
ボソッと呟いたかと思うと、逃げるように視線を私から離した。
初夏を感じさせる風が私たちの体を撫でて通り過ぎる。
同時に、華原君の言葉に切ない期待が過ぎってしまう。
どうしたらいいのかわからない。
私たちのこの距離はあまりにも不安定過ぎて、華原君の言葉をどんな風に受け止めたらいいのかがわからないよ。