Chain〜切れない鎖〜
一馬そっくりだった。

黒い髪。
少し疲れたように見えるが、整った顔。
切れ長の瞳。

その人は白衣を着て、聴診器を耳に嵌めた。
あたしのブラウスを捲り、心音を聞こうとする。



「こいつに触るな」

そんな彼に向かって一馬は冷たく言い放った。
まるで全てを拒否するような、恐ろしい声だった。






彼を見た瞬間に分かった。
一馬のお父さんだ。
代々医者の家計だって隼人も言っていた。

でも、あたしはそれだけしか知らない。
一馬の口から、家族の話なんて聞いたことがなかったから。

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