Chain〜切れない鎖〜
「誰があんな所行くかよ」

いつから話を聞いていたのだろう。
いつの間にか隼人の隣に一馬がいて、いつものようにダルそうに突っ立っていた。


「俺、建築で出したから」

「け・ん・ち・く?」

予想外の言葉を隼人と一緒にくり返す。
一馬はそんなあたしたちを、いかにも嫌そうな顔で眺めていた。





どうして一馬が家業を継がないのかは分からない。
でも、建築に興味があるのは分かる気がしたんだ。


建築。
家を作ること。
家族の空間を作ること。

一馬はやっぱり心の中で、幸せな家庭を望んでいたんだね。




気付いたら笑っていた。
ヘラヘラ笑うあたしを見て、一馬が面倒そうに眉をしかめる。
でも、その顔がまた照れ隠しにも見えてさらに笑ってしまった。

< 124 / 306 >

この作品をシェア

pagetop