Chain〜切れない鎖〜
隼人が去ったあとは、ありえないくらいの静寂が訪れる。
仕方がない。隼人は休む間もなく喋り続けるから。


隼人といても楽しい。
話題が尽きない。

でも、こうやって一馬といるのが一番好きだ。
心が落ち着いて、癒されるのだった。





一馬の手には、昨日の傷がまだ生々しく残っていた。
腕もあざだらけだから敢えて長袖を着ているんだろう。
それなのに痛い素振り一つ見せない一馬はさすがだった。
あたしは少し打ち身になっているだけなのに、ひぃひぃ泣いていたのに。


「俺は痛みに鈍い」

一馬はそう言った。

確かに自分の肉体的、精神的痛みに強いのかもしれない。
今まで色々経験してきたのだから。




でも、あたしの痛みに関しては、驚くほど敏感だと思った。

「芽衣を少しでも傷つけたら許さねぇ」

地獄の底から聞こえるような恐ろしい声で、一馬は不良たちにそう言ったのだから。

< 126 / 306 >

この作品をシェア

pagetop