Chain〜切れない鎖〜
「…一馬のお父さん」

思わず声に出してしまった。
一馬はただ無言で前を睨んでいた。






何であたしは気付かなかったんだろう。


隼人が「かずくん」と呼ぶなと言った訳を。
綾の不倫相手のことを。
一馬が父親を避けている訳を。



目の前の事実に、震えが止まらなかった。






「お前の家、羨ましい」

そう言った一馬の顔が脳裏に焼き付いて離れなかった。

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