Chain〜切れない鎖〜
「やめなよ」

「芽衣…」

「綾が後悔するだけ」

綾はあたしの言葉に黙って俯く。
肩がぶるぶる震え、人形のように白い肌を、涙が伝った。



「芽衣は…かずくんしか見えてない」

そう言い放って綾は走り去っていった。

あたしは、その後ろ姿が見えなくなるまで見守ることしか出来なかった。





確かに一馬しか見えていないのかもしれない。
一馬のふとした顔が、あまりにも寂しそうだから。

でもね、綾も実際辛いんでしょ。
あたしは一馬の味方であると同時に、綾の味方でもある。
綾にはそのことを分かってもらいたいよ。






蝉が鳴き始めた、暑い日のことだった。

あたしは、複雑に絡み合うお互いの運命を呪った。

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