Chain〜切れない鎖〜
「そろそろ帰るぞ」

退屈になった一馬があたしのシャツの裾を引っ張る。

無気力な一馬は、当然手伝うつもりもなく、数十分教室から消えていた。
ぶらぶらして時間を潰していたのだろう。
それでも、「お前を守るため」なんて言って、あたしを一人置いて帰ろうなんてしなかった。





そんな一馬の態度が、熱い熱い華の怒りに触れたに違いない。

華の最も恐れる人であるはずなのに。
極力関わらないでおこうとしていたのに。

華は一馬をすごい目付きで睨んだ。
冷淡な一馬の目とは違う、熱気のこもった目で。
スウェットと鉢巻きというおかしな姿が、余計に華の迫力を際立てているのだった。

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