Chain〜切れない鎖〜
学校に着いても、やっぱり誰もいなかった。

それは当たり前。
だって、始業のチャイムが鳴るのは、今から一時間以上後だから。


しーんと静まり返った校舎だが、入り口にはクラス表が貼ってあった。
それが唯一今日が始業式であることを物語っていた。




自分の名前を探す。

『吉澤芽衣』

それはすぐに見つかる。


出席番号はいつも後ろ。
今回もやっぱりそうだった。




中学生の時はこの瞬間が嫌だった。
あいつらがいないか、必死で探した。

でも、今は違う。
あたしをいじめる人はいないから。





校舎に入り、ゆっくり階段を上る。
コツ、コツ、と乾いた足音が廊下にこだまする。


そういえば、綾の言ってたかずくんは同じ学校なのかな。
かずくんはどのクラスなんだろう。
かずくんには好きな子がいるんかな。
あたしを見て、微笑んでくれるかな。


教室が近づくにつれ、そんなことを考えずにはいられなかった。



あたしの中でかずくんはどんどん大きくなり、そして輝いていった。





あぁ。これが恋って言うのかな。

あたしはため息をついた。

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