Chain〜切れない鎖〜
綾は黙ってあたしの話を聞いてくれた。
何度も背中をさすって。

そして、あたしが全てを吐き終えた後、こう呟いた。

「かずくんは、変わったんだよ」



分かっている。
分かってるよ。
散々華から話聞いたよ。

でもね、辛いんだ。
一馬が他の女を抱いたという事実が。
それなのに、あたしに触れないという事実が。


綾には分かんないよ。





「かずくん、芽衣がいなくなってから、また変わった」

ぽつりと綾が言った。

「街で見かけた時、凄く怖い目をしていた。
すっごい勢いであたしを睨んだ。
…荒れていた」

「…え?」

「芽衣のお陰で留まってたネジが外れた。
そんな感じだったよ」

「一馬が…」

「偶然基夫さんが見つけて、無理矢理実家に連れて帰ったんだって」

そう言って綾はあたしの顔をしっかり見つめた。

改めて見るとやっぱり綺麗な顔だ。
自分の不細工さに泣けてくる。

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