Chain〜切れない鎖〜
「芽衣ちゃん」

不意に名前を呼ばれ、びっくりして飛び上がった。
幽霊かと思った。

しかし、後ろを振り返ると、暗がりにぼーっと佇む白衣姿が見えた。



黒い髪。
あたしの両親よりもずっと若い顔。
そして、あたしが誰よりも愛している人にそっくりの顔。

一馬の名前を呼びそうになった。





一馬だったら、笑いながらあたしの名前を読んでくれるかな。
あたしが駆け寄ると、その大きい手を開いてくれるかな。
ぎゅっと抱き締め、あたしを酔わせてくれるのかな。


…一馬に会いたい。




溢れ出る気持ちを必死で我慢して、あたしは一馬のお父さんに頭を下げた。

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