Chain〜切れない鎖〜
「じゃあな、一馬」

そう言って送り出すお父さんを当然のようにシカトする一馬。
申し訳なく思い、振り返って会釈した。
その間も一馬があたしの手を引くものだから、階段から転げ落ちそうになった。


「あんないいお父さんなのに」

そう呟いたあたしを一馬が睨む。
少しヒヤッとした。
それでも、一馬が昔みたいに悲しい顔をすることはなかった。





心の奥底で、一馬はきっと喜んでいるんだね。
今はまだ、その気持ちに気付かないだけ。

そう思って一人で笑ってしまった。

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