Chain〜切れない鎖〜
向かいに座るカップルがそんなあたしたちを見て笑っていた。

ヤンキーとギャル。

「あり得ねぇ」なんて言って馬鹿にされた。


しかし、一馬が何気無く振り返ると、奴らはビクッと飛び上がる。
地獄の大魔王でも見るような瞳で一馬を見る。
そして、急に顔色を変えてヒソヒソ話を始めるのだった。





何がそんなに怖いのだろう。
さっきまで馬鹿にして笑っていたのに。

だが、帰るときに一馬にヘコヘコ頭を下げたのを見て、事態を察した。

一馬を恐れていたのだ。


昔の一馬を知らないが、今は普通の高校生なのに。
こんなに優しくていい人なのに。




「あの人たち、笑ってたね」

一馬に言うと、

「知らねぇ」

といつもの返事が返ってきた。

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