Chain〜切れない鎖〜

大切(一馬)

こんなに人が愛しく思えるなんて、思ってもいなかった。

俺は完全に冷めきった人間だと思っていた。



隣で寝息を立てる芽衣の髪をゆっくり撫でる。
黒い滑らかな髪は、俺の指の間からさらさらと落ちた。



「か…ずま」

名前を呼ばれてドキッとする。
冷静を装って芽衣を見たが、幸せそうに眠っているだけだった。

そんな芽衣を見て、幸せそうに笑っている俺がいた。



こうやって鼻の下伸ばして芽衣を見る俺。

奴らはこんな俺を笑うだろう。

いや、奴らとは関わらない。
そう決めたはずだったのに。

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