Chain〜切れない鎖〜
一馬が辛かったみたいに、京司だって辛かったんだ。


人を傷つける辛さ。
傷つけられる辛さ。
そして、大切な人が傷つく辛さ。


みんなが心に傷を負っているのだと思った。





今まで辛いのはあたしだけだと思った。
いじめられる側だけが辛いんだと思った。

でも、みんな山や谷を乗り越えて、一生懸命生きているんだと分かった。

少し気分が楽になった。





「あたしは今の一馬が好き」

京司にそう言った。

京司はあたしを見て、少しだけ笑ってくれた。


京司には、あたしの気持ちが分かったのではないかと思った。




「俺は、江口京司」

京司はあたしにそう自己紹介してくれた。

あれだけあたしをうざそうに見た京司。
そんな京司があたしの存在を認めてくれたようで嬉しかった。

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