Chain〜切れない鎖〜
「お疲れさまー」

控え室から出てきた一馬を笑顔で迎えた。



さっきの声のことは、努めて気にしないようにした。
いらない心配を一馬にかけたくないから。

だから敢えて何も言わなかった。





一馬はいつものように笑ってあたしを迎えてくれた。
優しい笑顔で。

もちろん一馬を見て騒ぐ女の子もいた。
でも、あたし以外には相変わらず無愛想な一馬は、軽く彼女たちを無視した。

一馬のファンには申し訳ないけど、それがすごく嬉しかった。





一馬の後ろから、上機嫌の隼人が飛び出してくる。

あれだけステージ上で飛び回ったのに、まだ元気に満ち溢れているようだ。


「俺の姫たちと遊びに行かなきゃ」

そう口走って、きゃあきゃあ騒ぐ女の子たちと外へ飛び出していった。






一瞬の出来事だった。



今宵何人の女の子が隼人の毒牙にかかるかなんて、隼人以外は知らないだろう。

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