Chain〜切れない鎖〜
「き…今日は勘弁してやる」

そう悪態をついて、やつらは慌てて去っていった。




初めて、やつらの惨めな背中を見た。
決して負けやしない、やつらの背中を。

何が起こったのか、あたしには理解出来なかった。







「一馬って強いんだね」

そう一馬に言うと、「知らねぇ」とだけ答えた。

「知らねぇ」だけで済むはずがない。
あいつらの慌て様、明らかに異常だった。
それでも一馬は何も言わなかった。
だから敢えて聞くことなんて出来なかった。






近付けば近付くほど知りたくなる。
もっと近付きたいと思う。

一馬の心の傷なんて、この頃のあたしは知らなかったんだ。

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