Chain〜切れない鎖〜
優しそうなあの顔で、あたしに微笑んでほしい。
大きなあの手で、あたしの頭を撫でてほしい。
そして、「芽衣」と愛しそうに呼んでほしい。




…あたしは何を考えているんだろう。

あたしの頭はかずくんの呪いにやられて、とろけてしまいそうだった。






「芽衣チャン」


そんなあたしの思考を遮ったのは、かずくんでも綾でもなかった。


嫌な笑い声。
忘れない声。

胸が苦しくなって、目の前の景色が色を失くす。
あのときの光景が脳裏をよぎる。


「汚れちゃったね、芽衣チャン」

あの時、そう言ってあいつはあたしを見下ろして笑っていた。
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