Chain〜切れない鎖〜
振り返らなければ良かった。
知らなければ良かったんだ。




桜の木の下にはかわいい女の子がいて、女の子の前には一馬がいた。

どう見てもあたしに勝ち目はない女の子。
抱き締めたくなるような、小動物系の可愛い子。
頬を少し染めて、恥ずかしげにうつむいていた。




心が抉られたように痛み、耐えきれなくなってその場にしゃがみこむ。

あたしみたいな人が、一馬に恋したのがいけなかったんだ。
初めから分かっていたよ。
釣り合ってないってずっと思っていたんだから。

一馬はきっとあの子にも優しく微笑むんだ。
一馬はあたしだけのものじゃないんだから。


今まで浮かれていたことが馬鹿馬鹿しく思った。
自分の愚かさに泣けてきた。
こんな気持ちになったのは、久しぶりだ。

< 62 / 306 >

この作品をシェア

pagetop