Chain〜切れない鎖〜
一馬はふっと笑って、その大きな手であたしの頭を撫でてくれた。
その微笑みがすごく温かくて、余計に涙が溢れた。


「東條の言う通り、俺は最悪な人間」

「ううん、一馬は最悪じゃないよ。
あたしを守ってくれた」

「お前は知らない」

「もっと知りたいんだよ!」

あたしは叫んでいた。
叫びながら泣いていた。



あたしは知ってる。
一馬が時々すごく辛い顔をすることを。
一馬にだって悩み事がある。
一馬をもっと知って、一馬の味方になってあげたいと思った。



こんな不器用で馬鹿なあたしの頭を、一馬はずっと撫でてくれた。

一馬の触れた部分だけが熱を持ち、敏感に反応する。
それがすごく心地よかった。

今日は一馬に甘えてしまおう。
たまにはこんな日も悪くない。

あたしは一馬に身を寄せ、少しだけ触れた一馬の体温を楽しんだ。

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