Chain〜切れない鎖〜
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「あの街には桜井君がいた。
だから、私はこの高校に来た」

放課後、がらんとした教室の席に腰掛けながら、華は呟いた。




校舎は物音一つないほど静かで、校庭で部活をする生徒の声がやたら大きく聞こえた。
桜の花は既に散って、これから来る暑い夏に向けて青々と葉を巡らす準備をしている。

いつの間にか時間が過ぎ、気付いたら五月になっていた。
今日は嬉しくなるようなポカポカと暖かい日。
それなのに、華の声には元気がなかった。

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