Chain〜切れない鎖〜
いつものように希望を失い、オモチャになることを覚悟して、あたしは目を閉じた。



綾が敵う相手じゃないことくらい知っている。
それに、綾にまで被害を及ぼしてはいけない。

これは、あたしの問題。

あたしが犠牲になればいい。


弱いあたしが出来ることはこれくらい。

綾を逃がしてあげるくらい。







あたしは目を閉じたまま身体に力を入れた。
きっとやつらによってボコボコに殴られ、倉庫に運ばれるんだろう。



それなのに、やつらの攻撃が来ることはなかった。


それどころか、



「うわぁぁぁぁ」

初めて聞く、やつらの狼狽した声があたしの鼓膜を突いた。






何が起こったんだろう。

誰もが恐れていたあいつを恐れさせることがあるなんて。

何かが間違っているのかもしれない。



目の前で起こっていることを確かめるため目を開こうとした時、あたしの左手がぐいっと引っ張られた。
それと同時に綾の悲鳴に近い声が聞こえる。

「芽衣!逃げるよ!?」


なんと、あたしの左手を握って走っているのは綾だった。

どうやってあいつらを掻い潜ったのか分からない。
それでも、綾はあたしを見捨てなかった。
それがすごく嬉しかった。
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