Chain〜切れない鎖〜
「芽衣チャンじゃん」

高揚していたあたしの気分は、一気に奈落の底へと落とされた。



今は一馬がいないのに。
…いや、一馬がいないからあたしに近付いたんだ。



一馬と華を思い出す。
二人とも過去を乗り越えて生きている。
一馬を見る華の視線。そこにはもう怯えは感じられない。

華は強い。
あたしも強くならないと。




「あ・そ・ぼ」

意地悪くそう言う不良たちを、あたしは初めて睨んだ。
思いっきり、嫌悪感を込めて。

あたしに一馬みたいな目力があったらいいのに。
こいつらを、あの感情のない、憎しみのこもった目で見てやりたい。
あのゾッとする目で。

だけど、やっぱりあたしにその力はなかった。




「挑戦的じゃん?」

奴らは楽しそうにそう笑った。
それと同時にお腹に鈍い痛みを感じ、あたしは意識を失った。

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