閉じた瞼の裏に
プロローグ
透き通った、
薄い色の、秋の空。
少しだけ、
肌を刺す透明な空気。
濃い、
土と枯れ葉の匂い。
季節の始まりは、
いつも、嗅覚と触覚から、訪れる。
"あぁ、秋だな"っと。
"ねぇ、真人。
貴方を失ってから、
もう、
何度目の、この季節
を迎えたんだろう。"
だから、
私は、
眼を閉じる。
触れない、
掴めない、
この空気の中で、
貴方の匂いを。
抱きついた、
貴方の背中の、
ブルゾン越しの骨の感覚。
―その暖かさ。
閉じた瞼の向こうに、
今も、なお、
探しているよ。
例え、
貴方の顔が、
貴方の声が、
霞(記憶)の向こうに消えたとしても。
季節の移り変わりを感じるように―
目を閉じれば、
私の、
嗅覚と触覚が、
貴方を、
覚えているよ。