ノン・レス
「センセーー
バイバーーーイ」
「センセ、じゃーねー」
夕日が、空の低い位置から
斜めに廊下に差し込む放課後。
部活動を終えた生徒達が、連れ立って
楽しそうに帰っていく。
「はい、気をつけて帰ってね!」
ああ、
私にも、こんな時期あったなぁ。
学校の先生をしてると、
毎年ずーっと高校生ばかり見ていて
まるで時間が止まったみたい。
私は、間違いなく、
毎年1歳ずつ歳をとっているんだけど。
職員室の席に戻り、書類を整理して
早めに帰る準備をしていた。
今日は、金曜日だし。
携帯を見ると、
<新着メールあり>の表示。
開くと、やっぱり山口君。
『今日は早くあがれそう。
良かったら、メシ行かない』
男性らしい、短いメール。
ケータイ画面を見て、思わず顔がほころぶ。
「和泉先生、何かいいことでもあったの」
向かいの席の先生に、見られてたみたい。