ノン・レス
しばらく、体の震えが止まらなかった。
涙は、出なかった。
山口君はずっと、静かに
私を抱きしめていてくれた。
こんな時には
人肌が必要なんだって
そんな、訳の分からないことを考えていた。
…プルルッ…プルル…
部屋の中で家電が鳴り出した
「ごめん、山口君、玄関で…上がって」
山口君は黙って頷いて、
私の後についてきた
リビングの電話を取る
こんなメールがあった後の
非常識な時間帯の電話
絶対、生徒会の誰かだ
「はい、和泉です…」
「イズミ、イズミ…
メール見た!?私…
イズミは大丈夫かと思って…」
「アキラ…」
アキラはもう
涙と鼻水でぐちゃぐちゃっていう声で
それでも、私を心配して、電話くれたんだ。
「アキラ、私は大丈夫だよ。山口君が今、来てくれたから」
「山口君が、そっか…それなら…安心…」
アキラは、それ以上
山口君と私については触れなかった
前に、山口君のことは相談していたし
今この瞬間に私がひとりぼっちじゃないことに、
ひとまず安心してくれたみたいだった。
「ねえ、田村、何があったの?
イズミ、他の子から何か聞いた?」
何があったかなんて…
こっちが聞きたいよ。
こんなに急に
こんなに若く
しかも、こんな
やっとあなたから卒業できた、こんなタイミングで…