fall

あいつのことは、ぶっちゃけ５年くらい好きだ。

厳密にいうと、５年３ヶ月と、１３日。
中３の６月８日に好きになった。
別にきっかけなんて大したことない。

あの日の給食は、あたしがどうしても食べられない、酢豚の日だった。

酢豚だって、特別嫌いなわけじゃない、ただ、給食の酢豚が無理だった。
わけがわからないくらいてろんてろんだし、かじってみても豚のどこの肉だかわからないし、無駄にパイナップル入ってるし。

初めて給食に登場してから、常に意識しているメニューだった。
誕生日をまだ迎えていない１４歳のあたしの歴史の中では、この世で唯一とも言える、嫌いな食べ物だった。
６月８日は、酢豚が出ると、５月末に配られた１ヶ月の献立表を見てからずっと、警戒していた。
その時の担任は、給食は残すな・あげるな・全部自分で完食！を提唱している男だった。

なぜなら、うちの学校のＰＴＡはうるさくない。
教育指導が時代の波に流されていなかった。
山本雅也、通称山Ｔは、ヤクザみたいな風貌で、まんまと我が中学にのさばっていた。
山Ｔはいい奴だが、怒らせたくないタイプだ。
何かにつけて教壇のところにある机を蹴り倒す。
ついでに、なぜかいつもサングラスだし。

ＰＴＡは何も言わない。
ちなみに、不良のいない学校だ。

それはいい。
とにかく、山Ｔがいる。
２年の時の坂本先生は食べれないなら残しなさいというタイプだったのに！！
誰かに食べてもらうわけにもいかないのに、どうしたらいいんだろう。
普段、ほとんど好き嫌いがない分、逆に食べられないものへの免疫がない。

もう、どうしよう。