ピンクグレープフルーツ
「來衣ー…」
朱音が泣きそうな声で來衣の名前を呼ぶ。
「朱音ー…」
「ってか、なんで直接言ってくれないんだろうね?」
つい、口から愚痴がこぼれた。
「うちも言ったんだけどね…」
朱音の話はこうだ。
朱音は、山口からメールが来たらしい。
“気持ちには答えられない”
みたいな感じで…。
そして、朱音にどうにかしてほしいと頼んだらしい。
でも朱音は、來衣の性格からして、山口本人から言われたほうがいいかもよ、と言った。
でも、山口は、俺から言ったらキズつくじゃん、って言ったらしい。
「だから、山口は來衣のこと、思ってくれてるんだよ。」
と、朱音。
そりゃ、山口本人から言われたら、キズつくよ…。
でも…
でも……
ふるときまで、なんで優しいの…?
あたし、山口に優しくしてもらった覚え、あんまりないけどさ…。
最後だけ、優しいなんて…
ズルいよ。