魔王と救世主の恋に
「ごめんね、きみの敵だから」
何が原因だったかなんて僕には分からない。
だけど、
生まれた時から僕と彼女の間には戦いしかなかったから。
空があるのが当たり前。
呼吸をするのが当たり前のように、僕らはたやすく命を投げ出し戦ってきた。
僕が闇で、彼女は光。
闇が光に焦がれるように、光は闇がなければ存在などしない。
そんなことは分かっているのに、もう何百年も続いてきた戦争を今更やめる術を僕らは知らない。
僕が闇で、彼女が光。
僕は人間から嫌われ暗闇に好かれる魔王で、彼女は人間から好かれ闇から憎まれる救世主。
雪のように白い花びらが舞う、桜の木の下。
夢のような二人だけの世界で。
「救世主や魔王の肩書なんてなければ、私はただの面倒臭がりで、あなたはただの根暗なのにね」
すみれの花のように透き通った笑顔で彼女は言った。
僕は困ったように笑うだけ。
仕方ないよ、そう簡単に思った。
僕は人間が嫌いだ。
この感情は、先祖から受け継いだものかもしれない。それでも僕は彼女以外の命あるものが嫌いで堪らない。だから、僕には魔王がお似合いだな。