砂のお城
まさか、と思った。

彼女が弾いているはずなんてないのに。

「そういや、この学校って音楽科もあるんだよな」
「あ、あぁ」
「…?どうかしたか?」
「いや、何でもない」

音楽科の誰かが弾いているに決まっている。

けれど、

『ね、晴。この曲が弾けるようになったら、一番初めに聴かせてあげるからね』

そう言って笑っていた幼なじみのことを思い出して、俺は少し切なくなった。

「今日は音楽科の推薦入試みたいだぞ」

進学科の校舎を挟んで、スポーツ科と正反対の位置にある音楽科の昇降口の貼り紙を見つけて、拓也が叫ぶ。

「音楽科、か」

優花は、いったいどこの高校に進学するんだろう。

そんなことを考えてしまう自分は馬鹿だ。

けれど、気になって仕方がなかった。
< 11 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop