砂のお城
たくさんの人が行き交う駅の中で、またうちの両親はコントを繰り広げていた。

「じゃあね!頑張ってきなさいよ!目指せ甲子園!」
「おい!亜紀、それじゃ野球だろ!目指すのは国立競技場だ」
「あれ?そうだっけ」

息子のやっているサッカーのことは全くわからないけど、いつも応援してくれた母親と

朝が弱いくせに、それでも休みの日は必ず早朝のジョギングに付き合ってくれた父親

俺をおちょくって遊ぶような両親だけど、

しばらく、このコントが見られなくなるのかと思うと少し寂しい気もする。

「じゃ、行ってくる!」
「盆と正月くらいは帰ってこいよ!」
「その時は、優花ちゃんも連れてね」

あぁ、と返事をすると俺は改札を抜ける。

俺の姿が見えなくなるまで、両親はずっと手を振っていた。
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