砂のお城
「4月から、翼くんとは別々だね。翼くん、ヴァイオリン上手なのに」
「翼は、音楽は趣味でいいんだよ。…ま、進学科にするか、音楽科にするかは悩んでたみたいだけど、別のことで」

静がチラリと私の方を見る。

「…?静?」
「ううん、何でもない」

たまに静は考えてることがわからない。

私の思考は、だだ漏れなのに。

なんか、敗北感…。

「静、なんかズルい」

恨めしげに静を見上げると、小さい子にするように静は私の頭をぽんぽんと叩く。

「優花には、まだわかんないよ」
「そうやって、また子ども扱いするぅ」

きっと実際、私のほうが静より子どもだ。

私なんかより、いろんなことを知っている。

「…いつか、わかる日が来る?」
「翼次第でしょ、それは」

だから、なんで翼くん?
< 19 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop