蝙蝠伯爵-コウモリハクシャク-
白井は今までに何千もの未来を見てきた。


しかしそれらは全て他人のものであり、自分のものではない。


決して見えない訳ではない。


ただ敢えて見ないだけ。


それは今を生きていく身でありながら先に自分の未来が分かってしまうと実に面白くないという理由からだった。


勿論昔はよく見ていた。


特に学生の頃はテストの問題を見て、答えを丸暗記するというのは毎度の事。


だがそれに伴い周りの期待も膨らみ徐々に後ろめたくなっていった。


高校生の頃、全国模試で常に満点を取っていたが、遂にやるせなくなり東大を蹴り本来の実力で入れる大学に行った。


その時初めて周りを裏切ったが、罪悪感よりも達成感に満ち溢れていたのは確かだ。


その時から白井は自分の未来を見なくなった。
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