蝙蝠伯爵-ｺｳﾓﾘﾊｸｼｬｸ-

カタリーナが尋ねると時嗣はより一層真剣な面持ちで答えた。



「主人のもとへ帰る事だ。」


「主人？」


「俺を造った日本人だ。」



その瞬間カタリーナ自身では時嗣の望みを叶えてやれないという事をはっきりと理解する。


自分は海を渡れるほどの人間ではないし、第一日本は今鎖国の真っ最中である。


でもそれは同時に他の人でも皆無に等しい事を示す。



「シドウ、その望みは誰にも叶えられないわ。第一あなたは百年も前にヨーロッパに来たのよ？その日本人は亡くなっているわ。」



カタリーナは諭すように言う。


時嗣が理解さえしてくれればずっと一緒に居てくれると考えたから。



「そんな事は承知の上だ。俺は主人の墓前に寄り添っていたいだけだ。」



最早何を言っても強情の一点張りだ。