蝙蝠伯爵-コウモリハクシャク-
「だって確か今日は明日馬(あすま)と出かけて…」
「アスマ?………ああ、ご主人ですね。」
青年は分厚い本に目を通してから言う。
どうやらあの本には私の身の上が事細かに書かれているらしい。
「そう、明日馬と一緒に買い物してて……あれ?」
必死にさっきまでの出来事を思い出そうとするが、そこからが思い出せない。
「たまにいるんだよな、自分が死んだことわかってない奴。」
隣りの金髪が欠伸しながら言った。
それを見た銀髪はクスリと笑う。
「仕方ないですよ。急なことだったんですから。」
銀髪は席を立ちどこからか蝋燭が三本立ててある燭台を持ってきた。
「あのっ、どうして私死んだんですか?」
銀髪が席に着くのを確認してから訊ねる。
「真実はこの中です。」
そう言って蝋燭に手をかざすと、まるで手品のように三本の蝋燭全てに灯が点いた。
「この炎を見て下さい。」