蝙蝠伯爵-コウモリハクシャク-
可南子は直感的にこの女性が人間じゃないと判断した。


顔が引きつる。


恐怖というよりグロテスク。


可南子はお化けや霊などといった心霊現象は平気なのにグロテスクなものは苦手なのであった。


思わずドアから少し離れる。


暫くするとドアを叩く音は消えた。


変わりにその女性のすすり泣く声と共に独り言らしき声が僅かに聞こえてくる。



「おね…がい……中に…いれ…て…」



女性は同じ言葉を何度も繰り返す。



(やっやだなー気味悪い…)



早く立ち去ってくれないかと願いながらも、いつまでもそこにいる。


この地の地縛霊か何かかと考えながら再度穴から覗いて見る。


すると一瞬で可南子の背筋に寒気が走った。
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