蝙蝠伯爵-コウモリハクシャク-
「きっっ…!」
可南子は今まで殺していた声を思わず漏らしてしまった。
そして後退した際玄関の段差に躓き尻餅をついてしまう。
可南子が見たのはべっとりと血のついた包丁を握り締めた女性。
そして先程は気付かなかったが真っ赤に染まった服を身に纏っている。
更に滴るような血を口元から零しながら何か言っている。
「おね…がい……我慢……でき…な…い…」
(何が我慢出来ないのよ!?)
可南子は腰が抜けてしまったため必死に床を這って一番奥の部屋へと向かう。
暫くするとまたドンドンとドアを叩く音が響いてきた。
「お腹が…すいて……」
(お腹すいたってまさか私を食べる気!?止めてよ!!)
そんな事を思いながら一番奥の部屋に逃げ込むとドアを勢いよく閉めた。