蝙蝠伯爵-コウモリハクシャク-
北棟



こちらも同じように懐中電灯を部屋中に当て見てまわる。



「ねぇ、こういう場合普通男が率先して先に行かない?」



先を行く加賀美の死角にベッタリくっ付き付いてくる塚原に言う。


すると塚原の体が強張った。



「ばっばかを言え!男にだって怖いものくらいあるんだよ!」



強い口調で言ったつもりらしいが声はかなり震えている。



(絶対こういう男と付き合いたくないな…)



内心そう思いながら先に進む。


すると塚原は震えた声で質問してきた。



「加賀美、お前にだって怖いものくらいあるだろ?」



加賀美は少し考えてから答える。



「そうね。あるわ。」


「そうだろ?誰だって怖いものはあるんだ!」



塚原は少し得意気になり続ける。



「加賀美の怖いものだって大方ゴキブリとかだろ?」
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