蝙蝠伯爵-ｺｳﾓﾘﾊｸｼｬｸ-

曲がり角の度に壁から様子をうかがい慎重に進んで行く。


調査に入ったのは真昼だというのに薄暗い建物の中はよく遠くまで見通せない。


おまけに人の気配が感じられない。



（この階じゃなかったのかしら…）



その時。



カシャン



何か小さなガラスが割れるような音がした。


加賀美はなるべく音をたてないように音がした部屋へ向かう。


到着すると一先ず様子を伺い拳銃を構えて中に入る。


だが特に変わった様子はない。


そのまま前に突き進んで行く。



ピチャ…



「ん？」



何か液体らしき物を踏んだらしく水音がする。


加賀美は持っていた懐中電灯で足元を照らす。



「これは！血！？」



そこには血の海が広がっていた。


加賀美はその血に触れる。



「…まだ凝固が始まってない。ついさっき流れた血だわ…。」



その後一通り辺りを見渡すが血の持ち主らしき人物はいない。


仕方なく次の部屋へ向かった。