蝙蝠伯爵-コウモリハクシャク-
しかし今日は違った。



「随分と遅かったな。」



返って来る筈のない応答が聞こえる。


カタリーナは急いで人形の部屋に向かう。


そこには人間の時嗣が相も変わらず無表情で立っていた。



「夢じゃなかった…」



カタリーナは時嗣に触れるとそのまま強く抱きしめた。



「シドウ…ずっと一緒にいて」



その言葉に時嗣は一瞬何か考えてから答える。



「お前が俺の望みを叶えてくれたら別に良い…」


「望み?」



時嗣の顔を見上げ言葉の意味を尋ねる。



「もう少ししたら…言う。」



なぜ今言わないのかと疑問に思いながらも、カタリーナはこの美しい人形を独り占め出来ると思い、心を踊らせた。
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