6cm
ふと目に入った、
この部屋の制限時間。

それは、
4回目のタイムリミット。

つまり…サトシと話し始めて、
4時間が経とうとしている事を知らせていた。


『時間…』

『ほんとだ。入り直す?』

『でももう明け方だし』

『明日も来たりする?』

『わかんない。あんま来ないから』

『そっか…』



心の中で葛藤する。

もう話せないなんてやだ。
だからって、
ここに来たからってまた会えるかも解らない。
と、言うか…。
もしサトシが、来なかったら…。
もう、話せないの…?

でも、女から連絡先聞くなんて…。
ナンパみたいな事、出来ない…。
引かれたらどうしよう…。
サトシにそんなつもりなんかなくて、
明日も来たりする?って言葉は、
社交辞令だとしたら…。


だけど…。







『連絡先交換する?』


気付いたらあたしはそう返していた。


『え?いいの?』

『うん。ここでまた会えるか解らないし…。
 サトシともっと話したいから』


…言っちゃった…。

チャット慣れしてるって思われるかな…。
事実だけど…それは嫌だな…。



だけどそんな不安とは裏腹に、


『聞いちゃいけないかと思ったから嬉しい』


と言う文字が目に飛び込んできて、
あたしはほっとして深く息を吐いた。


『真愛と話してるのが楽しいから』

『あたしもだよ』




サトシは自分のアドレスを打ち込んでくれて、
あたし達は4時間を共に過ごした、
そのバーチャルの部屋の扉を、
静かに閉じた。
< 7 / 13 >

この作品をシェア

pagetop