キミの日記『Cherry's Diary』
今にも泣きだしそうで、

愛らしい顔。

今、桃乃木に感じている

不吉な思いは気のせいだと感じながら。

私は、彼の顔をよく見ていた。


桃乃木は

苦しそうな声で言った。


「…なぁ…」



もう葉っぱも

千切れてしまった桜を眺めながら

桃乃木は私をつかんでいた。



「昔さ、言ってたよな。

二人で夢をかなえようって。」



私は犬のお医者さんで

桃乃木の夢は大切な人を

守る騎士になるんだとかなんとか。


忘れてた思い出…。


桃乃木に言われるまで

全く記憶にすらなかったかすかな思い出。



「お前、今も獣医になりたいの?」



「何でそう思うの?」



「いや、最近、

お前勉強頑張ってるなって思ってさ。

居残りしてるんだろ?」


「うん。」


答えを聞いた

桃乃木は優しく微笑み、

傘を閉じた。


「頑張ってるよな。美里。」


勉強の本当の目的は

桃乃木を避けたかったからなんだ。

そう、言えなかった。
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