キミの日記『Cherry's Diary』
式はあっという間に終わり、
ぼんやり楓さんの遺影を眺めながら私は
ヒカリに話しかけた。
「桃乃木…しっかりしてたね。」
「そうだね。立派に挨拶してたよね。」
手をさすりながら、ヒカリが私に聞く
「桃乃木君の隣にいた人…お父さんかな…?」
まだ、そこで挨拶をしている彼らを見ながら私は答えた。
「多分、違うと思う。私はあんまり覚えてないけど死んだって言ってたから」
「そうなんだ?」
「うん。」
考えれば考えるほど
桃乃木との距離が遠くなっていく。
それは、今後コウスケとのことを考えた時に
一番いい事なんだと理解していたことなのに
それが正しいことなのかわからなくなっていている。
私たちの共通の知人の一人が今
亡くなったんだ。
彼との絆が一本無くなった。
ただそれだけの事なのに
彼との『別れ』は
私が考えているほど望んでいたそれとは
全く次元の違うことに気がついてきていた。
「後で、控え室に顔だそっか?」
自分で距離を置こうと決めてたのに
簡単に揺らぐ気持ち。
「今、一番近くにいて欲しいの美里なんじゃない?」
なんてヒカリが言うと、
私は首を横に振った。
「そうでもないと思うよ。」
時々、ほっとする。
私は離れようと思っているのに
『桃乃木の近くにいてもいいんだよ』
なんて言われると。
お母さん亡くなったんだから
桃乃木のそばにいてやれよ。
コウスケは絶対にそんなこと言わないし
望んでないと思う。
コウスケが行くな
行くな
って言ってるような気がするんだ。
でも、私は行きたい。
抵抗する
けれども抵抗しない。
私は、浮気な女なんだろうか。
私は、
桃乃木のそばに行きたい。