キミの日記『Cherry's Diary』
━5月19日━

母さんの見舞いも終わり、

家に帰ると

美里と黒川が来てた。

美里の顔を見ると

ちょっとだけ目の周りが熱くなった。

日記帳をそのままに机の上に

置きっぱなしにしていた。

見られてはいないと思うけど、

とりあえず、

美里へのメッセージを残しておこうと思う。


『きゃ~ H !!』



━5月22日━

美里が風邪で休んでいると聞いた。

自分の風邪がうつったんだろうか?

なんか、悪いことしたなって思う。

思えば、小さい頃から

美里のヤツ、

どこか遊びに行くとなると熱出してたっけ。

どこかに遊びに行こうとしてたんじゃないか?

アイツ。

何にしても心配だ。



━5月23日━


美里の様子を見に行くと

美里の父さんと母さんが騒いでた。
 
なんか、家族って

いいなって思う。
 
もう少ししたら、

一人になってしまう俺は

どこに向かっているんだろうな。


━5月26日━
 
美里と喧嘩した。

あいつ、母さんみたいに

無理して病気になったらって思うと

いてもたってもいられなかった。

いや、嘘だ。

美里が誰かとデートしていたって事が

腹が立って仕方がなかったんだと思う。



だから、俺はアイツに好かれないのかもしれない。



━5月27日━

秋口さんのお見舞いに行く。

母さんと同じ病院だからついでって感じだ。

『美里と喧嘩した』

なんて言うと複雑そうな顔して笑ってた。

そりゃそうだ。

『美里の彼』って言うのが秋口さんの友達なんだから。

美里に

好きな男がいるのはなんとなく知ってた。

昨日の喧嘩だって

心配だって正当化していたけれど

本当はただの八つ当たりでしかない。

最低だ…

好きな人の…

美里の幸せを願えないなんて。


━5月28日━

黒川って結構共通点が多い。

少しだけ、気になる。

誰にでも元気を分け与えてくれる存在だ。 

僕の世界を広げてくれる人であることは確かだ。

黒川について思う。

今日は、黒川からデートのお誘いがあった。

たいていの人はあなたがいるだけで

幸せになれると思う。

俺自身も嬉しかった。

ふわっとした気持ちが風のように体を通過したのがわかった。

これは、恋なのかなって思う。 

けれど、あなたよりも

もっと大切にしている人がいる。

それもまた事実なのだから

僕はあなたの申し出には頷けない。 

うなずけない理由を説明すると、

ありがとう。って返された。

…ごめん。

本当に。

俺が頷いていれば黒川は笑っていられたのかもしれない。

誰かの幸せを犠牲にして、

美里と付き合いたいって気持ちを優先させた俺。

俺自身の幸せを追おうとしていることは、

本当に正しいことなのだろうか?
< 189 / 201 >

この作品をシェア

pagetop